Jutta Eckstein への質問

Jutta Eckstein 氏の基調講演「組織にアジリティを取り入れる – どうすればアジャイルになれる?」 の後に行われた質疑応答です。

変化のために必要な3つのロールが揃わない場合は?

※3つのロール: プロジェクトリーダー、情熱のあるチェンジ・エージェント、アーキテクト / 技術リーダー

Q: 変化のために必要な3つのロールが揃わない場合はどうすればいいか?掛け持ちしてもいい?現場では情熱のある人が技術リードを兼任していることも多い。

A: 技術リードがいなければ組織は当然変化できない。しかし、ロールを兼任すると負担が大きすぎる。一人だけでも始めることは可能だが、仲間は必要。そういう仲間を見つけなければならない。

なお、「(変化に費やす) 時間が無い」という声をよく耳にする。その場合、とにかくそういう状況を改善すること。「なぜ忙しいのか」を発見し、改善する。「時間がないからテストコードが書けない」なら、何らかのテストを自動で実行できるようにすればいい。

どうすれば「離」に達することができる?

Q: いつまで経っても守破離の「守」から抜け出せないケースが多い。アジャイルプラクティスを実施しているだけで「我々はアジャイルだ!」と思っている人が非常に多い。どうやってその段階を抜け出せるか?気づきを与えるにはどうすればいい?

A: 確かにこれは非常に難しい。たとえば私は趣味のテニスにおいて「守」のレベルを抜け出せないが、プロじゃないので別にいいと思っている。ひょっとしたら周りの人たちも前に進みたいと思っていないのでは?質問してみるといい。

変化のモデルにおける「アトラクタ」という要素がないか探してみる。次のレベルに行ってみたくなるような要素はないか聞いてみる。全員のふりかえりだけでなく、一対一で聞いてみるのも良い。

Q: 本人が気づいていない問題を発見して提示してあげてもいい?

A: 効果的かもしれない。ひょっとしたら (集団でのふりかえりでは話せないような) 個人的な問題が隠れている可能性がある。

組織内の別の変化とアジャイル化が衝突していたらどうすればいい?

Q: 「現場では複数の変化が同時に起きていることもある」という話だったが、ある変化と別の変化が衝突するケースもある。例えば「品質が低いのはプロセスが未熟なせいだから、きっちりした監査を導入しよう」という変化と、アジャイルを求める変化は衝突している。この場合はどうすればいい?

具体的に言うと、全社共通の品質管理チームのボスが指揮統制型で押しつけてくるので困っている。

A: 大組織では確かにそういうことがある。早い段階でアジャイル開発のプロセスに参加してもらって、要望を聞いてみると良い。ユーザーストーリーを作る手助けをしてやったり、質問をしてみること。「なぜそのプロセスを適用する価値があるのか?ビジネス上の価値はあるのか?」と。また、その質問の意味を知ってもらう。もしボスの言い分が役に立つとわかれば、適用してもいいかもしれない。

まずは要求を確立すること。本当は何が必要なのかを聞き出すと良い。

重要なポイントは、チームがその人に対してどのような態度をとるべきかということ。彼は利害関係者である。これまでの議論のレビュー結果を示すなどして、話し合いを続ける。恐らく時間をかける必要があるだろう。