書評: Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革”成功”ガイド

Scrum を現場に適用したいと考えているマネージャー層、およびそうしたマネージャー層を取り込みたいと考えている人ならば必読の書籍です。

この書籍は以下のようなストーリーで構成されています。

  1. なぜ従来の方法 (ウォーターフォール) が機能不全に陥りやすいのか。
  2. なぜ Scrum が従来の方法より成功しやすいのか。
  3. Scrum をどこから始めればよいか。
  4. Scrum を企業レベルで展開するにはどうすればよいか。

まず最初に、既存のプロセスが現代の環境に適していない事実と、その原因を語ります。ウォーターフォール型の組織が孕む問題と、古いやり方が現場を悪化させていく現実をいくつも例示します。それはいわゆる「普通の」現場で働いたことのある人なら誰もが納得できるものです。

続いて、「Scrum とはそうした問題に対処するために生まれてきた」という経緯を説明し、実際にどのようなアイディアを含んでいるのかを説明します。「Scrum は既存のやり方よりうまくいきやすい」という確信を強める一方で、「こうすると失敗する」という事例も忘れず提示します。

さらに、実際に Scrum を導入したいという読者のために、具体的に Scrum を小さな現場から適用していくやり方 (パイロット) の説明に移っていきます。どんなプロジェクトに、どんなチームで進めれば成功しやすいかを解説します。Scrum の各プラクティスについても非常に具体的に解説します。

最後に、Scrum を組織全体に適用していく方法に触れます。ここでは組織の壁を壊し、既存の文化を変えていく戦略を語っています。Scrum を提唱し実際に多くの組織に根付かせてきた経験をもつ筆者だけあり、その視点は現実的です。「どんな障害物があり、どう克服していくか?」「いかに効果を数字で評価するか?」等は、自分一人で解決するには非常に難しい問題ですが、ここにも有力な示唆を与えています。


タイトルにもある通り、この本は組織の変革を成功させるためのガイドです。既存の Scrum プラクティスを体得した上で、それを組織レベルに適用したいと考えるならば、ぜひとも目を通すべき良書です。